衆議院議員 静岡県第7選挙区城内 実

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◎ 政 治 ◎ 人権救済法案に関する質問主意書

2012.09.20 ピックアップ

 昨日、人権救済法案が閣議決定された。法案の内容に関する閣議決定であり、法案の国会提出には閣議決定がもう一度必要である。引き続き警戒をしていく所存だ。
 国会閉会前に「人権救済法案」に関する質問主意書を提出したが、答弁書が返ってきたので、その内容を一問一答形式でご紹介する(私の質問部分は太字にしてある)。予想通り木で鼻をくくったような答弁だが、いかに政府がわれわれ慎重反対派の呈する懸念に対して真摯に答えず、また議論を深めてもいないことがおわかりいただけるだろう。
  質問主意書の原文(PDF)はこちら
  答弁書の原文(PDF)はこちら
    (出典:いずれも衆議院ホームページより。※携帯電話ではご覧いただけませんのでご了承ください)
  

 
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「人権救済法案」に関する質問主意書
 
 
 平成二十三年十二月、「人権委員会の設置等に関する検討中の法案の概要」が発表され、また、平成二十四年二月には法案の骨子が発表された。八月現在、法案がまとめられ、与党内の了承を経て国会への提出が近いとされる。
 「人権委員会設置法案」と「人権擁護委員法の改正案」の二つによって成るこの法案のうち(二法案をあわせて「人権救済法案」と呼ぶ)、人権委員会設置法案によれば、国家行政組織法第三条第二項の規定に基づき、いわゆる「三条委員会」として法務省の外局として人権委員会を設置、同委員会は人権侵害による被害の救済及び予防に関する事務について、政府から独立した形で所掌する。
 また、人権擁護委員法の改正案によれば、人権擁護委員を人権委員会の指揮監督のもとで、人権啓発、人権相談、対象事件に関する調査及び措置等の職務を行うものとする一方、法改正により身分を非常勤国家公務員とする。 あらゆる人権問題を扱う包括的な人権救済機関を、非常に強力な権限と政府からの独立性を持つ三条委員会として設置することには、私を含め多くの国会議員、識者、国民一般から強い懸念が寄せられているところである。平成二十一年以降の歴代法務大臣は同機関について、「国民の理解を得られる」ものとする旨の見解を表明している。しかしながら、国会答弁および法務省による説明は乏しく、また説得力にも欠ける。
 よって、現状でこのような機関を設置することはきわめて拙速であり、また不要であると考え、以下、質問する。

  

 現在の法務省内部の人権擁護機関の取り組みによって、平成二十三年の人権侵犯事件のうち約九九六%(二万二一六八件の新規救済手続き開始件数のうち、二万二〇七二件の処理件数)が処理されている。現在の人権擁護機関はきわめて有効に機能していると判断でき、したがって、この数字から見れば、現状の体制を変更するだけの必要性は認められないものと考える。にもかかわらず、政府から独立した人権救済機関を新設する必要がある理由について明確に示されたい。

  
一について
法務省に設置されていた人権擁護推進審議会の平成十三年五月二十五日付けの答申によれば、現行の人権相談及び人権侵犯事件の調査処理制度は政府の内部部局である同省の人権擁護局を中心とした制度であり、同省の人権擁護機関による人権侵犯事件の調査処理も同省の内規に基づく活動であるため、実効性及び信頼性の面において限界があるとされている。また、人権に関する様々な条約に基づき設置されている委員会は、我が国に対し、政府からの独立性を有する国内人権機構の整備の必要性を度々指摘している。
同省としては、このような現状を踏まえ、政府からの独立性を有する人権救済機関を新設する必要があると考えている。
 

 法務省のホームページに平成二十四年五月十一日掲載された『Q&A(新たな人権救済機関の設置について)』(以下、Q&A)では、新たに人権救済機関を設ける理由のひとつとして「我が国では、差別、虐待などの人権問題が起きており、公権力による人権侵害への対処も含めて実効的な救済をする必要があります」と述べている。私人間における人権侵害と公権力による人権侵害を同一の機関において取り扱うものとしているが、仮に政府から独立した人権救済機関を設置する必要があるとすれば、対象を私人間の人権侵害ではなく、刑務所等の公権力による人権侵害に限定するべきではないか。

 
二について
 公権力による人権侵害による被害の救済とともに、私人間の人権侵害による被害の救済も重要であることから、法務省としては、新たに設置される人権救済機関が、私人間の人権侵害による被害も取り扱うこととするのが適当であると考えている。
 

 二に関連して、私人間の人権侵害事案について、個別法がすでに充実しているにもかかわらず、人権救済機関による対処が必要な理由について示されたい。
 
三について
 法務省としては、個別の法律により設けられている人権救済に関する制度は、必ずしも総合的な人権救済の観点に立っているわけではなく、また、人権問題の全ての分野に設けられているわけではないことから、人権侵害による被害を広く対象とする人権救済機関を新設することが必要であると考えている。
 

 人権委員会の委員の選任に関する中立性について、これまでの国会答弁や前掲『Q&A』においては国会の同意人事によって中立性は担保されるとする。しかし、任務と権限のおよぶ対象が限定されている既存の三条委員会と比べ、人権委員会は「人権侵害に関する各般の問題」という非常にあいまいかつ広範な任務をもって、全国民、全住民を調査対象とする包括的な機関であり、国会同意人事といえど担保として不十分であると考えるが如何。

 
四について
 法務省としては、新たに設置される人権救済機関の委員は、公正かつ中立で人権問題を扱うにふさわしい人格識見を備えた者である必要があることから、このような者を選任するための方法としては、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する方法が適当であると考えている。
 

 四に関連して、任務と手続きの対象があいまいで広範な機関が政府から独立した三条委員会として設置されるのは不適当であると考えるが如何。

 
五について
 法務省としては、新たに設置される人権救済機関の所掌事務並びに当該機関が行う調査及び救済手続の対象については、新たな人権救済機関の設置に関する法案(以下単に「法案」という。)において明確に規定される必要があると考えており、御指摘は当たらないものと考えている。
 
六 
 四に関連して、人権救済機関がその調査等職権の対象とする範囲に、皇室は含まれるか。皇室の扱いに関し、法的根拠をお示しいただきたい。

 
六について
 法務省としては、天皇及び皇族については、その地位の特殊性に鑑み、新たに設置される人権救済機関による調査及び救済手続の対象とすることは想定していない。
 

 四に関連し、人権救済機関の調査及び手続きについて、法案では現時点で強制調査権や調査拒否した場合の過料は設けないとするが、強制権がなく現行と同じ任意調査のみをするならば、三条委員会とするに足る根拠に欠けると考えられるが如何。

 
七について
法務省としては、新たに設置される人権救済機関を国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項に基づく独立の行政委員会として設置することと、当該機関が行う調査を任意のものとするか否かとは、別の問題であると考えている。
 

 人権擁護委員法の改正に際しても、その資格については現行のまま「市町村議会の議員の選挙権を有する住民」、すなわち地方参政権を持つ者とされる。外国人に地方参政権が付与されれば、外国人にも人権擁護委員に就任する資格が付与されるということでよろしいか。

 

 前述のとおり、人権擁護委員は法改正により非常勤国家公務員としての身分を与えられるものとされる。他方、八の通り、外国人が人権擁護委員に就任する場合、自動的に非常勤国家公務員の身分が付与されることになるが、公務員の選定を国民固有の権利とする憲法十五条に抵触するのではないか。そうでないとすれば、その論拠をお示しいただきたい。

 

 八に関連し、人権擁護委員法改正に伴い、その資格要件を裁判員制度と同様、「日本国籍を有する者」に限定しないのはなぜか。

 
八から十までについて
 人権擁護委員法(昭和二十四年法律第百三十九号)第六条第三項によれば、人権擁護委員の候補者の要件については、「市町村の議会の議員の選挙権を有する住民」とされており、日本国籍を有しない者は人権擁護委員に就任できないことから、法務省としては、御指摘の改正をする必要はないと考えている。
なお、仮に将来、市町村の議会の議員の選挙権が外国人に付与されるか否かが検討される場合には、その過程で、この要件の当否について議論されることになると考えられる。
 
十一
 法案では、人権救済機関の規模について言及がない。与党民主党内においても無駄削減など行政改革の必要性が叫ばれ、また野田政権は来年度の新規国家公務員採用を四〇%削減するとの意向を示しているところであり、税収が減少し国債増発に頼る財政状況の中で、新しい行政機関を設置することに対しては、きわめて慎重であるべきである。よって、設置前に法案の段階で、予算、人員の数等について当然示しておくべきであると考えるが、これらにつき算定は進んでいるのか。もし進んでいるなら、お示しいただきたい。進んでいないなら、法案提出の段階において、算定を行っていない理由をお示しいただきたい。

 
十一について
 新たに設置される人権救済機関については、その具体的な組織体制や事務内容が確定していないため、現段階では、お尋ねの予算及び人員の数を具体的に示すことはできない。
 
十二
 滝実法務大臣をはじめ、民主党の歴代法務大臣は所信等で、人権救済機関設置の検討にあたり、「国民の理解を得られるような制度の構築」を図ってきたとするが、設置に向けた法案提出に向けて「国民の理解」は得られたと認識しているか。また、得られたという認識をするなら、いかなる根拠をもってそのように認識するのかお示しいただきたい。

 
十二について
 法務省においては、法案の提出に向けた一連の作業に際し、様々な意見を参考にしており、その上で、様々な機会を捉えて、新たな人権救済機関の設置に関する同省の考えを明らかにし、国民の理解を得られるよう努めてきたところである。
 
十三
 滝実法務大臣は本年八月七日の私の質問に対し、郵便やファクス等の形で法務省に届いている人権救済機関の設置について慎重な立場からの要望書等につき、「法務省に届いているかどうかわかりません」と答弁された。法務大臣は法務省を所管する大臣であるにもかかわらず、要望書等に目を通していないのか、お示しいただきたい。また、法務省内における要望書等の扱いにつき、お示しいただきたい。

 
十三について
 新たな人権救済機関の設置に関しては、積極、消極いずれの立場の意見についても、その概要は法務大臣に報告されている。ただし、法務省に要望書等として届けられたものか否かについてまで明確にして報告されているわけではない。
 
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